講義概要
IoT・AIセンターは崇城大学情報学部未来情報コース,並びに、地域活性化や地域イノベーション創発のための理論である地域コミュニティブランド(SCB)の研究機関である一般社団法人SCBラボと連携し,熊本市北区役所と2020年に締結した地域コミュニティ構築並びにイノベーション創発に向けた包括連携協定に基づいて,PBLによる講義「異分野イノベーション基礎・応用」「地域メディア基礎・応用」を開講しています.
本講義では,毎回北区役所職員10数名が講師役となり,総勢36名の学生とテーマに沿った小グループを構成することにより,複数の北区の課題解決に向けたプロジェクトを同時に推進することで,実践的な学びを深めていきます.
講義の様子
背景
地方においては,少子高齢化や東京への一極集中,過疎化に起因して資本や人材が不足しています.そのようななかでも,地域を活性化し地方創生を果たすためには,地域にこれまでにない新たな価値,すなわちイノベーションを創発していくことが不可欠です.本講義では,本学星合隆成センター長(情報学部教授)が提唱する理論であるSCBを用いて,地域に存在する地域ならではの資源同士が有機的かつ持続的につながることにより,大きな資本や特に優秀な人材によらずとも,地域にイノベーションを創発することに取り組んでいます.講義のテーマ
令和6年度の講義においては、北区が提起している15の地域課題のうち、「空き家利活用の促進」「地域観光(植木温泉)振興」「地域の若者の人材育成」「地域資源の発掘と広報」のという4つの課題解決に向けた活動をおこなってきました.以下,その概要をお知らせします.1.空き家利活用の促進
北区においては人口減少によって年々空き家の数が増加しており,周辺地域の資産価値の低下や子どもの連れ込みや放火といった犯罪の増加が懸念されることから,熊本市空き家対策課並びに全国古民家再生協会熊本支部,麻生田校区自治会と連携した空き家利活用の促進に取り組みました.8月13日に,北区麻生田校区を対象に実態調査をおこない,空き家が発生してしまうプロセスの多様性についてまとめました.

麻生田校区自治会と共に空き家や空き室調査
次に,実態調査によって分かったことを基に,10月27日に熊本市中心市街地の蔦屋書店熊本三年坂で開催された国土交通省後援イベント「住まいリングフェア2024」で学生が講演をおこない,空き家情報を共有するために特に「働く世代」「子育て世代」「高齢者」「学生」という4つの世代が連携する必要性を提案しました.

国土交通省後援イベント「住まいリングフェア」で学生が講演
さらに,11月24日に菊池市泗水町を訪れ,空き家や古民家をコワーキングスペースとして利活用する事例を視察しました.

古民家再生事例視察
今後は,調査から得られたデータを基に作成する麻生田校区空き家マップを利用し,今後空き家になりそうな住宅をピックアップし,空き家の発生抑止に向けた所有者との情報共有のあり方について新手法を提案していく予定です.
2.地域観光(植木温泉)振興
植木温泉観光旅館組合と連携し,近年利用者が減少している植木温泉の利用者増加に向けて,近年増加する台湾人移住者と植木温泉とのマッチングに向けた基礎調査をおこないました.まず,6月25日に,複数の植木温泉観光施設を視察し,関係者の方々と意見交換をおこないました.

植木温泉観光旅館組合の視察の様子
10月5日に開催された「植木温泉祭2024田底夢まつり」に参加し,イベントに参加していた台湾人コミュニティにインタビューをおこないました.その結果,台湾人の個人や家族ともに植木温泉に興味があることがわかりました.

植木温泉田底まつりの様子
今後は,台湾人居住者や旅行者から選ばれる温泉施設となるために必要なビジョンや取り組みについて提言していこうと考えています.
3.地域の若者の人材育成
北区の空き家対策や観光振興を継続的に進めていくためには,長期的な視点での人材育成が必要となることから,特に小中学生に対して企画力や連携力など地域課題を解決するための機会提供をおこないました.7月24日に,IoT・AIセンターに北区の小学生24名とその保護者らが集まり,最先端のプログラミング言語であるPythonを学ぶ講座とIoT・AIセンターの近未来スタジオを体験するイベント「北区子どもチャレンジ公民館」をおこないました.

北区子どもチャレンジ公民館の様子
10月24日に開催されたふれあいフェスタinほくぶに参加し,北部中学校生徒と連携して子どもや高齢者向けにeスポーツ体験ブースを運営しました.

ふれあいフェスタinほくぶの様子
ふれあいフェスタinほくぶのノウハウを基に,再び中学生と共にeスポーツ体験ブースを運営するため,11月30日に植木中央公園運動施設で開催された北区主催「北区こどもまつり2024」に参加しました.

北区こどもまつり2024での様子
その他の人材育成の取り組みとして,北区の最北に位置する田底小学校拡大学校評議員会の委員として情報学部内藤豊助教が事業者など地域の教育資源を学校教育への活用方法について助言しました.

7月22日 田底小学校拡大学校評議員会
11月7日に開催された北区校区自治協議会役員研修会並びに田底校区自治協議会定例会で,本学学生が制作した北区田底地域のまちづくりの取り組みの記録動画を教材とした地域活動研修がおこなわれました.

本学学生が作成した動画が教材として上映されている様子
今後,北区の小中学生を対象として,星合教授と本学植村匠准教授が著した「パパっとPython~ドリルで入門プログラミング」を教材とするプログラミング講座が3月22日,23日両日,星合教授を講師に開催される予定です.

パパっとPython~ドリルで入門プログラミング
4.地域資源の発掘と広報
近年,行政機関にも人手不足が問題となっており,地域活動や地域のキーパーソンを発掘することが比較的困難となりつつあります.そのため本学学生が運営主体となって北区地域活性化動画コンテストを開催し,地域活性化に取り組む活動を動画作品として集め,活動を可視化するとともに,賞を提供することで活動の支援を行っています.昨年から共に地域活動を積極推進する岡山県岡山市北区と連携し,コラボで開催するようになりました.6月17日に学生が北区の植木地域のすいか農家並びに菊池市観光課・飲食店をインタビュー取材しました.

植木すいか農家へのインタビューの様子

菊池市観光課へのインタビューの様子
11月30日に学生2名が岡山市北区を訪問し,地域活動を主体的に展開する岡山市北区まちづくりアンバサダー太田氏並びに岡山市北区成本区まちづくり推進室長をインタビュー取材しました.取材内容は崇城大学SCB放送局によって再編集され,J:COM熊本(地上波10ch)で放送されました.番組(YouTube)はこちら

取材の様子
むすび
このように,IoT・AIセンター,情報学部未来情報コース,SCBラボ,熊本市北区の連携によるPBL講義においては,身近だけれども解決が困難なさまざまな地域課題に学生らが主体的に取り組んでいます.今後も北区の課題解決を通して地域創生に貢献できる人材育成に努めていきます.